けんまめTOP > 現役しろあり防除施工による白蟻についての公開記事一覧 > 基礎断熱の家における(建築後の)白蟻対策がほぼ無意味な理由とは

基礎断熱の家における(建築後の)白蟻対策がほぼ無意味な理由とは

カテゴリ:白蟻工事  

基礎断熱の家にお住いの方にとっては聞きたくない話かもしれませんが、
基礎内・基礎外に関わらず基礎断熱の物件は、白蟻対策の観点から考えると
極論的な言い方になりますが、断熱材をいじらない条件であれば効果的な白蟻対策は出来ません



そのため、多くの白蟻業者では(近年は特に)基礎断熱の物件においては工事を行わない
もしくは、白蟻工事を完了しても、被害発生時には損害保証などの対象から外れることが増えてきています。

その理由を今回は説明していきたいと思います。

基礎断熱の構造とは



まず、基礎断熱とは通常は床上の壁の中などに設置する断熱材を床下の壁(基礎)にも設置することで
床下・床上と分けずに、「床下も屋内の一部」という考えのもと、家全体を暖かく保つ効果が期待されています。

これにより、従来であれば
換気口や基礎パッキンの隙間から、床下に冷たい空気が入ることで、1階の部分が床下からの寒さを受け温まりにくかったものが
外周基礎の「空気が入る隙間(本来は必要なものなのですが)」を塞いでしまうことで、気密性を高め、家全体を寒さから守るような仕組みになっています。

ちなみに、混同しやすいのが、「床断熱」かと思います。
(私もこの業界に入ったばかりの時に初めて名前を聞いたときは、お恥ずかしながら区別が出来ませんでした。)

床断熱は、従来の床下からの寒さを床上へと伝えないようする断熱のため、基礎に何かをするというものではありません。

下記画像で基礎断熱と床断熱の違いを確認できます。




基礎内断熱



内基礎断熱は、その名の通り基礎の内側に断熱材を貼り付けたものです。



基礎断熱を大々的に強みとして主張していない工務店やハウスメーカーにおいては、
浴室のみ基礎内断熱というところは多々見られます。
「冬場でもお風呂が寒くない」という謳い文句があるところはこの傾向が強いかもしれません。



基礎外断熱



基礎の外側に断熱材を設置する基礎外断熱は、
内基礎断熱に比べると(印象として)少ないようにも思います。



この基礎外断熱のやっかいな点は、
基礎内断熱であれば、内側にそのまま断熱材が貼ってあるので
御施主様が万が一、基礎断熱と知らなかったとしても、白蟻業者は(新人でない限り)床下で見たらわかりますが
断熱材の上に、さらに化粧モルタルを塗るため、見た目にはわからない点です。



御施主様が「この家は基礎断熱の家です」と言わないと
白蟻業者であっても「その家が基礎断熱だと気付かなかった」ということもあります。

工事後に保証が出たのに、
白蟻の発生があった場合に、実は基礎断熱だったとわかり
保証書には「基礎断熱は対象外」と書いてあり、保証が受けられない(シロアリ駆除も補修も実費)ということもあります。

これがクレームのもとになったりもするので、白蟻業に携わる一人としてはすごく困ります。

白蟻の侵入経路



そして、白蟻はどこから侵入するかですが
基本的には以前の記事「ベタ基礎でのシロアリの侵入経路は?新築でも白蟻が出る理由を紹介!」でも説明しているベタ基礎の物件の侵入経路だけでなく
基礎断熱特有の部分から侵入してきます。

基礎内断熱に関しては、ベタ基礎の侵入経路から入ってきてしまった後が大変なのですが

基礎外断熱は構造上、
そもそもベタ基礎のコンクリートに囲まれてる部分の外側全面から家に入ってくるので最悪です。

そして、断熱材はコンクリートと違い、
白蟻からすると土と同じく(むしろそれより)柔らかい素材で、
断熱材の中は、土の中よりも暖かく住みやすい環境となります。
そして、断熱材を簡単に通り抜けると目の前に木(餌)が現れます。

新築時の基礎断熱物件の白蟻予防



新築時(家が建つ前)であれば、基礎内断熱なら白蟻予防は可能です。

新築時の通常物件の白蟻予防工事



新築時の白蟻予防工事(通常)をざっくり説明します。

①基礎を作る部分の下に来る土壌に薬剤を散布します。

これにより、まず家の下の土壌に薬剤効果がある間は白蟻が入ってこれなくなります。
敷地に入っても家の下の土には潜り込ませなくする感じです。

②基礎(と雨が入らないよう屋根)が完成した後は基礎の内側に防蟻薬剤を散布します。

これにより、コンクリート面に侵入してきても、入ったときに薬剤に触れて、そこで白蟻を食い止めます。

③地面から1メートル以内の木材に薬剤を散布します。

これにより、実際に食べられる可能性がある土台・根太・大引・柱などに対して
表面に薬剤を散布することで、木の中に入ってまうことを防ぎ、同時に木材の食害の進行を止め、木を守ります。
白蟻の薬剤を加圧注入した木材を使用することもあります。



まとめると、白蟻がやって来ても

①家の下の土壌で撃退

②床下空間で撃退

③最後の砦として木材表面で撃退


※赤色の矢印は白蟻の進行経路
※白色の矢印は薬剤に触れ無効化された状態

配管や水抜き穴など、「ベタ基礎でのシロアリの侵入経路は?新築でも白蟻が出る理由を紹介!」で説明した個所から入ってきたとしても
どこを通っても木にたどり着く前に、白蟻は薬剤に触れて死んでしまいます。(危険度の無効化)

この3段階で家(の木材)を白蟻から守ります。
これは、基本的にどの新築の家でも同じです。

ただ、①は土壌汚染が考えられることもあり、
工務店やハウスメーカーの指示によるものではない限り、
もしくは、②が出来ない場合を除き、実際は行っていないことが多い気がします。

しかし、当たり前ですが、これは施工完了から5年のみ有効です。

それ以降は、薬剤効果の切れた無処理の状態へ近づいていきます。

基礎内断熱の新築時の白蟻予防工事



基礎内断熱であれば、
上記②の基礎面への散布を、断熱材を貼る前に行うだけで、
通常の新築白蟻予防とある程度は同じ効果が得られます。

ただし、侵入後にすぐ断熱材に入られ、
その中を進んでこられると新築予防の効果はほとんどありません。



基礎外断熱の新築時の白蟻予防工事



しかし、基礎外断熱は違います。

まず、①は効果的と考えるかもしれませんが、落とし穴があります。

通常、雨が入らないため床下空間であれば薬剤効果が洗い流され消失する危険がなく、
薬剤の効果は通常通り5年は持つと考えられますが
基礎の外周(実際に白蟻が侵入してくるだろう部分)の薬剤効果は文字通り外であり、雨が降れば流れ落ちて消失します。

そして、②はそもそも白蟻が基礎の外から入ってこれるので意味がありません。



基礎断熱内から侵入するため、結果として、最後の③しか対策は出来ず、
最悪の場合壁の中を進んで被害は広がります。
結局は、実際に木材に到達した時に薬剤が効いている間はその分を触れるよう祈るしかありません。


建築後に基礎断熱で白蟻予防が出来ない理由



それでは、新築の薬剤効果が切れる5年目以降の再処理について考えてみましょう。

まず、基礎断熱の有無の関わらず、
どんな家でも、再度、すべての1階の壁を剥いで壁中の柱にもう一度白蟻の薬剤をまくなど現実的ではありません。

そのため、方法は下記の2つのみとなります。

基礎面に散布(上記②)して床下侵入時に食い止める

一部の木「床下にある木材」に散布して(上記③)、最初に被害に遭う木材を守り、それよりも上に位置する木材への被害を食い止める



これが通常の再処理時の薬剤散布範囲です。

それでは、基礎断熱であればどういった処理になるか見ていきましょう。

基礎内断熱の既築予防の場合



基礎断熱においては、断熱材があるので②がそもそもできないのです。
表面に張り付けられた断熱材の表面に散布をしても、白蟻はその中を通ってくるので全く意味はありません



見た目には床下全体に散布しているように見えても
実際は、③一部の床下木部への表面処理のみと言っても過言ではないかと思います。

基礎外断熱の既築予防の場合



基礎外断熱の場合、②の基礎内に散布は可能ですが、
そもそも散布をしても、基礎の外から入ってくることが格段に可能性としては高いので無意味です。

そして、最も残念なことに、
③床下木部への処理は、そもそも床下のコンクリート内部から入って来なかった場合
白蟻はそのまま、薬剤を散布できていない面を通り、木に到達します。
そして、そこにある、土台や柱などの木材を真っ先に加害されます。



対策もできず、白蟻は人の前に出てこずに木の内部を食べ続けるため、
結局、被害が大きくならないと誰も気付けないのです。

基礎断熱で白蟻の発見が難しい理由



ここまで見てきて、気付いた方もおられると思います。

「もし、断熱の中を白蟻が通るなら、白蟻業者が点検として床下に入って、断熱材をはがすこともなく、どうやって見つけるのか?」


そうです。
まだ、被害が出ていない場合は、断熱材内に発生している白蟻はほぼ見つかりません。

※もちろん、蟻土などの状態で被害が表に出る前に見つかる場合もありますが。

床上の巾木が食べられていたり、柱の根元が食べられていたり、室内のどこかから羽蟻が出てきたりと、
被害が出ていれば、初めて、その下の床下空間を徹底的に調べます。

しかし、被害も出ていない状態で、
断熱材を勝手に、はがしたりすることなど、白蟻業者の権限では不可能です。
はがしたら最後、専門の業者でないと取り付けることが出来ないので
「白蟻屋が勝手にはがしたから冬の室内が寒くなった。どうにかしろ」と言われてしまう危険性があるのです。

ちなみに、これは内基礎断熱の話です。

基礎外断熱であれば、
そもそも、はがすことなどできないので「被害が出てから呼んでください。」としか言いようがありません。

ハウスメーカーと白蟻業者の関係



もし、基礎断熱(特に外基礎断熱)と分かった場合、
御施主様に白蟻予防工事自体を勧めない(営業しない)白蟻業者もあるかと思います。

時と場合には寄りますが、私もその一人です。

「この家は、外基礎断熱なので通常の白蟻対策ができません。白蟻が出ても対応が難しいですし。」
と本当のことを言うことはできません。

なぜなら、点検をしている(私たちの多く)のは
ハウスメーカーや工務店から依頼された白蟻業者(通常、新築時などに工事をした業者)だからです。

白蟻業者は、取引業者であるハウスメーカーや工務店から仕事をもらっている立場です。
ですので、川上にいる取引先に嫌われる、関係を悪くする可能性が高いようなことは言いづらいのです。

では、どうするか?

問題がない場合は、点検後には「問題ありませんでした。」と言ってそれだけで帰ります。
もちろん、白蟻の発生があった場合は伝えますが、
その際も、一度持ち帰って、ハウスメーカーと相談となります。
その場でストレートに説明すると、関係が悪くなる可能性があるためです。
特に、家を建てたハウスメーカーをとても嫌っている御施主様などの場合は…あら捜しをしてくるので怖いです。

ただ、ホームページ・お電話などの一般申込や
家を建てた会社ではない別の会社経由(農協などの中間会社)などは
状態を正直にお伝えしても問題がない場合がほとんどなので
床下点検では、御施主様に洗いざらい全て話します。

ほぼすべての問題点をお伝えして
そして、それをどうするかを御施主様と考えるという当たり前のスタンスでいられるので、点検をする側からしてもすごく楽です。

基礎断熱でシロアリ駆除が難しい理由



では、木を取り直して
白蟻の被害が出ていて駆除を頼みたいときはどういった工事になるか。

内基礎と外基礎で、工事内容は多少変わるのですが、
通常の工事(床下散布や被害箇所への薬剤注入など)を除いて、通常工事とは違う部分を説明します。

基礎内断熱の白蟻駆除の場合



基礎内断熱の場合は、断熱材を上部の切り取ってしまいます。



そして、その隙間に薬剤をまくことで、白蟻がそのラインより上に上がれなくします。

ただし、下記のデメリットがあります。

・もしすべての上部を切り取る場合、すごく時間(と同時に費用)が掛かります。
・隙間を作るのですから、この時点で断熱性能は落ちます。
・散布は基礎のほんの一部にかけるだけとなるので、効果も限定的となります。
・断熱材を削った部分の限定的な処理のため、白蟻の保証が出るかは不明

もし、床下全面の断熱材を全て取り外して、徹底駆除の許可があった場合であっても
まずは、床下で断熱材を全て剥がす大工事になり(これは白蟻業者の仕事ではありません)費用と時間がすごいですし
さらに、そのあと、再度、断熱材を貼り修復する(これも白蟻業者の仕事ではありません)となると多額の費用がかかります。

そして、白蟻に関しては薬剤失効後に再発が多いので、また同じ理由で同じ作業(駆除)が必要になる可能性があります。

基礎外断熱の白蟻駆除の場合



これは、外基礎を覆っているモルタル層を壊し、
さらに断熱材を調べないと、どこから入っているかわからないので内基礎よりも割と大きな工事となります。

この工事に関しては
私自身、経験がないので推定(私ならこうするという推定)ですが

①モルタルと断熱材をはがして発生個所を特定

②発生個所が特定できれば、薬剤処理(駆除)をして、修復

③ベイト工法などで床下でなく、家の外周にて予防する

かなという気がします。

ただし、再発の可能性はありますし、再発したら、また①と②です。

家が建った後に、
「もう、こんなんだったら、基礎断熱をやめたい」と言っても
本気のリフォームレベルでない基礎断熱をやめるというのは難しいのではと思います。

基礎断熱物件において付随するデメリット



実は上記以外でも
白蟻対策の観点から言うともう一つデメリットがあります。

外の空気を床下に入れないということは、床下は換気されていないということです。
そうすると、床下に散布した薬剤は、なかなか乾きません。

結果、その湿気が原因でカビなどの発生を招きます。

もしくは、
家の中を循環(換気)するタイプの可能性もあります。
この場合であれば、薬剤を散布した床下の空気が家中に広がります。

今の薬剤はいくら低臭とはいえ、
薬剤の臭いが部屋の中で循環されれば、やはり多少気になる方もいるのではと思います。
私たちが工事後に床下から出るときに「少し薬剤の臭いがした」とおっしゃる方も中にはおられます。
白蟻業者が、床下散布時に点検口を閉めているのは、そういった理由も一部あります。

また、いくら安全とは言え、
薬剤によってはあまり吸わないほうが良いものもあります。

最後に



白蟻対策の点において、基礎断熱がどれだけ厄介かお分かりいただけましたでしょうか?

もちろん、基礎断熱それ自体は悪いものではなく、
メリットも多いものだと思っています。

享受できるものと、それにより失うもの
トレードオフで考えた場合、上記のようなことを知っている私のような白蟻業者の方は
きっと、基礎断熱の家は買わないのでは思います。

これから家を買われる方にとって
一つの判断材料になれば幸いです。

現役しろあり防除施工による記事一覧

シロアリの蟻道が出来るまでの期間とは?1か月?1年?   
(白蟻の生態)
シロアリの蟻道(ぎどう)と4つの役割とは?   
(白蟻の生態)
5年に一度もシロアリ予防が必要ない理由とは?|自分でDIYするなら?   
(白蟻の生態,白蟻工事)
白アリ薬剤ミケブロックをご紹介|自分で白蟻工事(DIY)をするならこの薬剤   
(白蟻の生態,白蟻工事)
基礎断熱の家における(建築後の)白蟻対策がほぼ無意味な理由とは   
(白蟻工事)
シロアリ工事薬剤の効果や特徴、しろあり対策協会認定薬剤の名前をご紹介   
(白蟻工事)
シロアリ対策にバルサンやアースレッドのくん煙処理は意味がない理由とは?   
(白蟻工事)
シロアリ駆除に対する補助金は基本的にありません。火災保険も適用出来ない理由は   
(白蟻の生態,白蟻工事)
シロアリの女王の一生をご紹介|副女王や、大きさ・寿命・画像なども   
(白蟻の生態)
シロアリのベイト工法とは?料金や目安やメリット・デメリットを紹介   
(白蟻の生態)
ベタ基礎でのシロアリの侵入経路は?新築でも白蟻が出る理由を紹介   
(白蟻の生態)
アメリカカンザイシロアリの駆除方法や保証は?分布や特徴を紹介   
(白蟻の生態,白蟻工事)
羽アリは羽が生えたシロアリ?白蟻の羽アリをご紹介   
(白蟻の生態)
シロアリの大きさは?成虫や卵の大きさをご紹介   
(白蟻の生態)
シロアリにとっての天敵とは?白蟻を餌とする生き物をご紹介   
(白蟻の生態)
もしかしてシロアリ?羽蟻?シロアリに似た虫をご紹介   
(白蟻の生態)
鉄筋コンクリートのマンションやアパートにシロアリは出る?シロアリ駆除費用は誰が負担?   
(白蟻の生態)
シロアリの糞(ふん)はどんなもの?アメリカカンザイシロアリの糞は?   
(白蟻の生態)
シロアリは食べられる?昆虫食(食用)として白蟻の重要性   
(白蟻の生態)
シロアリはゴキブリの仲間?白蟻駆除でゴキブリはいなくなりますか?   
(白蟻の生態,白蟻工事)
シロアリはどうやって意思疎通してるの?シロアリのフェロモンとは?   
(白蟻の生態)
シロアリは目が見えない?視力はどれくらい?   
(白蟻の生態)
シロアリが直接人体へ与える影響はありますか?   
(白蟻の生態)
自然界の益虫でもあるシロアリの自然界での役割   
(白蟻の生態)
シロアリはいつ寝るの?シロアリの睡眠時間は?   
(白蟻の生態)
シロアリは冬眠するんですか?   
(白蟻の生態)
執筆者:タケルさん(通称)
・大学卒業後、ウェブ業界へ就職
・その後、転職後、現在まで防蟻業界に10年以上身を置く昭和生まれの現役のしろあり防除施工士
・2020年より白蟻業界での経験を活かし「けんまめ」のエディターとして参加。
執筆者:タケルさん(通称)
・大学卒業後、ウェブ業界へ就職
・その後、転職後、現在まで防蟻業界に10年以上身を置く昭和生まれの現役のしろあり防除施工士
・2020年より白蟻業界での経験を活かし「けんまめ」のエディターとして参加。